お達磨の桜

遺跡の桜

初めて見たお達磨の桜は枯死寸前だった。枝先の多くは芽吹くことなく、花はまばらで木肌が剥き出しになっている。雪折れしたのか、いくつかの太い枝に新しい裂傷が見えていて痛々しい。満面に花を付けた力強い姿を期待していたのでその姿にいたく落胆したが、顔を出したばかりの太陽が桜を照らすと、一瞬ハッとするほどの妖しい表情を見せた。なぜ妖しいと感じたのだろう。その理由はわからないが、とにかく数百年長らえた生命体だからこその何かを発していたのかもしれない。桜は一瞬だけ、妖艶と呼ぶに相応しい色彩を帯びていた。

お達磨の桜の名前はずっと前から知っていたし、気になってもいた。次に山形に行くことがあれば、必ず立ち寄ろうと思っていたが、機会のないまま時間が経ち、その間に桜は衰弱した。桜の西側に回ると無数の無骨な鉄柱が樹幹を支えている。生命力を失いつつある抜け殻のような樹幹に、鉄の柱がなぜかよく似合ってみえた。これほど手厚く保護された桜ではあるが、残された時間は少ないのだろう。

お達磨の桜は元は3本あったという。そのうち最も立派だった1本はずっと昔に枯死し、残る2本が大切に保護されてきた。うち1本は枯死寸前で、もう1本も損傷が激しい。周辺はソメイヨシノが植えられ、ちょっとした花見名所になっている。花期には催しが行われ、夜にはライトアップもされるのだとか。弱った桜には負担になるのではないだろうか。


Noteお達磨公園内に立つ2本のエドヒガンの古木。
撮影2024年4月13日
名称お達磨の桜
別称なし
樹種エドヒガン
所在地山形県東村山郡中山町達磨寺
指定県指定天然記念物
樹齢750年※
樹高12.0m※
根回不詳
幹周5.4m※
枝張不祥
出典 ※中山町公式サイト