般若院のシダレザクラ

般若院のシダレザクラ

古刹の寺宝

記録的な早さで桜前線が通過した2023年の春。一本桜巡礼の開幕戦として、以前から気になっていた茨城の古木を巡ることにした。1本目は般若院。桜巡りを始めた頃からその名をよく目にしたが、今まで一度も訪れたことはなかった。

前の晩から茨城入りし、朝6時ごろに到着。花期は臨時駐車場が準備されていると聞いていたが、境内の駐車スペースが空いており、車を停めた。時節はちょうど彼岸に差し掛かった頃で、墓参りの参拝客は見かけるが、観桜客と思しき人は思いの外少ない。本堂の裏に回ると、風格のある桜がまさに見頃を迎えていた。

般若院のシダレザクラ

桜好きの間では全国区と言って良いシダレザクラ。主幹は失われているものの太い枝が四方に伸び、見事な樹冠を成している。樹齢500年と言われるのも然もありなん、の貫禄だ。柔らかな朝日が上方の花を染め、花から枝、枝から幹へと光が回ってゆく。妖艶なほどに美しい。

寺院の古桜といえば本堂の前にあるのが定番である。しかしこの桜は本堂の裏側にあり、寺の門前からは見ることができない。あたかも寺宝のような扱いである。また、指定木の存在感が強すぎて目立たないが、子孫と思われるシダレザクラも育っている。

桜全体に陽が回るのは7時をすぎる頃。それまでにもそれなりの参拝客が出入りするが、首都圏に近い名桜の割には撮影はしやすい。老木だけに支柱が多いが保存のためには止むを得ないだろう。とはいえ、すでに役割を果たしていない支柱もあり、もう少しスッキリできるのではとも思う。



Note般若院は978年に創建されたと伝えられる天台宗の古刹。1525年に現在の場所に移転、諸堂が建てられ、現在の般若院としての伽藍が整ったという。般若院のシダレザクラは現在の本堂の裏、墓地を見守る墓守桜のように鎮座している。
撮影2023年3月19日
名称般若院のシダレザクラ※
別称龍ヶ崎のシダレザクラ
樹種シダレザクラ
所在地茨城県龍ケ崎市根町3341
指定県指定天然記念物
樹齢500年
樹高10m
根回不明
幹周5m
枝張東西:15m/南北:22m
出典現地案内板
※茨城県指定天然記念物として「龍ケ崎のシダレザクラ」との名称で登録されているが、ここでは一般的に広く認知されている「般若院のシダレザクラ」の呼称で掲載する。