草岡の大明神ザクラ

国内最大級の桜

伝承では坂上田村麻呂公が蝦夷を平定した際、戦勝の記念としてこの地に5本の桜を植えたと言われている。その伝承を今に伝えている3本の古桜が、久保ザクラ、薬師ザクラ、そしてこの大明神ザクラで、いずれも樹齢は1200年という。

伝承の信憑性はともかくとして、3本とも相当の古木には違いないだろう。

幹は内側が朽ちて2本の木に見える。特に細い方は古い樹皮を突き破り、若い幹が発達しているのが分かる。ひこばえが成長したものかもしれない。この逞しい幹には伊達政宗公が戦に敗れた際身を隠したとも伝えられる。坂上田村麻呂公が植えた桜が数百年の未来に伊達政宗公の命を救う。眉唾ではあるがロマンのある話である。

田村麻呂伝説の残る3本のうち久保ザクラは枯死寸前といえ、薬師ザクラもまた損傷が激しい。一方でこの大明神ザクラは立派な樹冠を保ち、樹勢も旺盛である。現地案内板によると幹周は10mを超え、桜としては日本一の太さであるとのこと。同じく日本一を謳う奥十曽のエドヒガン桜は20mを超える規格外の幹周だが、これは根上がった部分を計測したもので、実質「根回り」であるというのが案内板の主張でもある。言い分はわからなくもない。

いずれにしろ大きさ、古さ、そして伝説と、名木たる条件を兼ね備えた桜である。


Note民家の敷地内に立つエドヒガンの古木。坂上田村麻呂公が蝦夷を平定した際の戦勝記念に植えた5本の桜のうちの一つと伝えられている。また、戦国時代には伊達政宗が戦で敗走しこの桜の洞に隠れて難を逃れたとの伝説を残す。幹周10.91mは奥十曽のエドヒガンにつぐ国内2番目の太さである。奥十曽のエドヒガンが、不定根の発達した特異な部分を計測していることを考えると、事実上日本一の太い幹を持つ桜と言える。
撮影2024年4月13日、14日
名称草岡の大明神ザクラ
別称種まき桜
樹種エドヒガン
所在地山形県長井市草岡694
指定国指定天然記念物
樹齢1200年※1
樹高18.8m※1
17.2m※2
根回11.1m※2
幹周10.91m※1
枝張東西25.0m/南北22.0m※
出典 ※1 現地案内板(文化庁・長井市教育委員会設置)
※2 現地案内板(山形県教育委員会・長井市教育委員会・長井文化財保護協会設置)
現地案内板は2つある。「※1文化庁・長井市教育委員会設置」のものが、より記述が詳しく新しいと思われる。