釜の越桜(釜の越農村公園内の桜群)

元・置賜桜回廊の主幹

筆者は平凡なサラリーマンなので、桜巡りには時間的な制限がある。見頃のタイミングや天候まで条件を揃えるとなると、制限がより強くなる。ゆえに、目当ての桜を訪問するまでに数年かかることもある。そして、目当ての桜の元気な姿を見ることがついぞ叶わない場合も・・・。釜の越ザクラはそんな桜の一つである。

初めて釜の越桜を訪問したのは2011年。これはその時の写真。桜はそれなりの見頃だが空は白く微妙な天気、たまに薄日が差し込むが納得いく写真は撮れなかった。それから数年で老衰が進み、2017年にはついに花を一輪もつけなかったと聞いた。枯死したのだ。ぼんやりと、いつかまた再訪しようと思っていたが、もう元気に花を咲かせる姿は見ることができない。

10年以上ぶりに訪問した釜の越桜はやはり花を付けていなかった。800年生きた桜も例外なく命の終わりを迎えたのだと改めて思った。傍らには子孫木の勝弥桜が元気いっぱいに咲き誇り、我が世の春を謳歌している。樹齢約100年ほど若木なので樹勢は旺盛である。親木の樹齢まではあと700年。どこまで生き続けるだろうか。

周辺には多くの桜が植えられ、今では「釜の越農村公園内の桜群」として、置賜さくら回廊の新たな名所となっている。また、勝弥桜以外にも釜の越桜の子孫木が植えられ、育てられている。これは釜の越桜の枝を取り、根付かせた子孫木で、30年前地元有志の手により植樹された。今では樹高15mにまで成長している。

根元には「さたゑ桜」との名札。由来は不明。まだ若木である。

枯死した桜は安全のために切り倒されるのが常であるが、釜の越桜はそのまま保存されている。実は根の一部はまだ生きているそうである。そういえば以前はもう少し桜に近づけたがこの時はロープが広範囲に巡らされ、立ち入り禁止となっていた。万一の倒木のリスクを考えてのことと思われる。多くの子孫達が見守る中、老桜は再び目覚める時が来るのだろうか。

Note白鷹町高玉地区に立つエドヒガンの古木。2017年に枯死。背景に冠雪した朝日連峰を望む堂々とした立ち姿で白鷹町古典桜ブームの火付け役となり、置賜桜回廊でも屈指の人気桜だった。釜の越とはこの辺りの地名で、源義家が陣を敷き、釜で兵糧を炊いたという伝説に因む。今では子孫木の勝弥桜等が育ち、「釜の越農村公園内の桜群」として新たな名所となっている。
撮影2011年5月3日、2024年4月14日
名称釜の越桜
別称なし
樹種エドヒガン
所在地山形県西置賜郡白鷹町高玉4149
指定県指定天然記念物※2018年に指定解除
樹齢800年※
樹高12.81m※
根回13.28m※
幹周5.54m※
枝張不祥※
出典 ※山形県公式サイト