明星桜

九州最古の桜

会社勤めの身としては、花期と休み、そして望ましい天候が重ならなければ、思うような桜の写真は残せない。故に、訪問を重ねても「縁の薄い」桜がある。ここではそのうちの一つについて紹介したい。

伊万里市郊外の山間に、まるで神社の神様のように祀られる桜がある。平安時代末期の久安年間(1145〜51)に浦内淡路守がこの辺りを開拓した際、京都の壬生寺より桜を持ち帰り、植えたものという伝承がある。伝承どおりならば、樹齢はあと20〜30年で900年に達するということになる。筆者の知る限り、九州には他に樹齢900年相当の桜はない。老齢ゆえか開花は比較的早く、他の有名な桜を回っているとつい見頃を逃してしまう。3度目の訪問でようやく見頃に出会えた。

遠目では目立たないが、近づくと主幹が失われていることがわかる。背後の建物には観音像が祀られている。

それにしても一本の桜というにはあまりに歪な形である。地面から突き出た二本の太い幹がぐにゃりと曲線を描きながら空へと伸び、前衛的なアート作品のように見える。その樹形を見れば、樹齢900年の真偽を問うまでもなく歴史の長さがわかる。

明星桜

明星の名の由来は夜間に火を焚いて桜を眺めると花びらが火に映えて明星の趣があったためという。夕食をとり、近くの宿にチェックインした後様子を見に来てみると、参道をほのかに照らすような灯りが桜を浮かび上がらせていた。


Noteこの地には久安年間(1145〜51)に都より赴任してきた公家の浦内淡路守が東山代町脇野地区を開拓した際、望郷の念から京都の壬生寺より桜を取り寄せ植えたとする伝承が残る。夜間に火を焚いて桜を眺めると明星の趣があったことから明星桜と呼ばれるようになった。
撮影2021年3月26日、2022年3月26日
名称明星桜
別称東山代の明星桜
樹種エドヒガン
所在地佐賀県伊万里市東山代町浦川内5377
指定県指定天然記念物※1
樹齢900年※1※2
樹高13.0m※1
根回不祥
幹周5.0m※1※3
枝張東西:21.0m/南北:15.0m※1
出典※1現地案内版
※2現地案内板の伝承より推定
※3地面から突き出た大枝を合わせて幹周11.4mとし、日本一の幹周とする向きもある