慈眼桜

最西端の名桜

2025年はずっと引っかかっていた宿題の桜と縁のある年となった。この慈眼桜もその宿題の一つ。九州の最西端のエリアに立つことから足を伸ばす機会がなかったが、今回思い切って見に行くことにした。早朝、佐世保の宿から海にかかる橋を越え、平戸に入る。海沿いの道を行き、木々の生い茂る農道を抜けると畑が広がり、その奥に桜が満開の姿で迎えてくれた。車を降りるとほのかに潮の香りがする。どことなく沖縄を思わせる空気だと思った。

4月初旬の平戸の日の出はちょうど6時ごろである。日の出の少し前に現地入りしたが、ちょうど太陽の昇る方角には防風林がある。桜の全身に光が回るのは7時ごろである。

背後に聳えるのは慈眼桜の名の由来となった慈眼岳。山の稜線と桜の樹冠が重なって見える。

慈眼桜は全国でも珍しいオオシマザクラの古木である。オオシマザクラはソメイヨシノの親にあたる樹種で白く大きな花びらが特徴だが、この時は朝日が桜を照らし、薄紅色を帯びていた。

アクセスの不便さから避けていた桜だったが、来て良かったと思う。磯の香り、柔らかな陽光、鳥の囀り、咲き乱れる花。贅沢な朝である。気がつけば2時間近く滞在していた。


Note 地元の農家により発見されたオオシマザクラの古木。背後に慈眼岳を望むことから慈眼桜と名付けられた。この地を開拓したキリスト教徒が植えたのではないかと考えられている。
撮影 2025年4月5日
名称 慈眼桜
別称 なし
樹種 オオシマザクラ
所在地 長崎県平戸市木ヶ津町
指定 市指定天然記念物
樹齢 150年
樹高 10.0m
根回 不詳
幹周 3.0m
枝張 20.0m
出典 現地案内板