水中のしだれ桜
高山村は20年ほど前から桜の里として花見客を集めている。ぶどうやりんごの畑が広がる扇状地一帯には歴史ある桜が点在し、中でも特に見栄えのする5本の桜は「高山五大桜」と銘打たれ、大々的に宣伝されている。ここ水中のシダレザクラはその五大桜の筆頭格と言える桜で、善光寺平を見下ろし、はるか北信五岳を望むスケールの大きな名桜だと思う。

この桜を初めて訪れたのは2009年のこと。このときは、警備員に誘導され、休耕田を臨時駐車場にしたひどいぬかるみに車を停めさせられた。車が滑って動き出しはしないかと気になったが、ひとまず桜を見ることにした。戻ってくると、案の定、車はぬかるみで滑り、一段下の田んぼに落ちていた。
駐車場を管理する役場に電話し、危険な場所にはコーンを立てるなどした方がよいと訴えたが、まともに取り合ってはもらえなかった。役場の対応には腹が立って仕方がなかったが、一方で、車を引き上げる際には近所の方々があれこれと手を貸してくださった。旅先でそんな温かい人情に触れたこともあり、この土地は、いろいろと思い出の残る場所となった。ちなみに翌日ここを訪れた時は他の花見客のバイクが同じように田んぼに落ちていたので、引き上げるのを手伝った。

コロナ禍の余波が残る2021年、再び水中の桜を訪れた。以前ほどの人手はなく、花見客はまばらである。道中、早朝から地元有志が道を掃除してくれており、遊びに来た身としては頭が下がる思いがした。この日は霜の降りた寒い朝で、地面を踏み締めるとパリパリと音が鳴る。空気は澄んでいて、遠く北信五岳がくっきりと見えた。

ちなみに水中とはこのあたりの地名である。かつては高山村大字水中といったが、現在は高山村大字高井に統合されたようだ。

| Note | 旧水中地区の丘陵地に立つシダレザクラの古木。高山村五大桜の一つに数えられ、満開時には薄緋色の滝の如く咲き誇る。シダレザクラが多く点在する高山村でも屈指の人気桜。 |
|---|---|
| 撮影 | 2009年4月19日、2021年4月11日 |
| 名称 | 水中のしだれ桜 |
| 別称 | なし |
| 樹種 | シダレザクラ |
| 所在地 | 長野県上高井郡高山村大字高井1259-1 |
| 指定 | 村指定天然記念物 |
| 樹齢 | 260年※ |
| 樹高 | 22.0m※ |
| 根回 | 不詳 |
| 幹周 | 4.0m※ |
| 枝張 | 12.0m※ |
| 出典 | ※高山村公式サイト |
