大坪の一本桜
前日にロケハンを済ませ、当日は日の出前に到着した。ここは辺りが開けていることから星空と共に撮影された写真を多く見かける。この日も夜間に撮影しを終えて日が昇る前に帰宅しようとするカメラマン達と多くすれ違った。これから桜が一番美しい時間帯だというのに勿体無い気もするが、地元のカメラマン達は早朝や昼間は撮り尽くしているのかもしれない。やがて日が差し、桜がオレンジ色に染まり始めた。
塚の上に根を張った特徴的な出で立ちで、根元には庚申塔が祀られている。庚申塔は寛文13年(1673年)のもので、当時流行していた庚申講(健康長寿を祈念する民間信仰の行事)の記念に築かれたという。わざわざこうした庚申塚の上に桜が植えられたのは、何か信仰上の理由があったのだろう。
各地の桜巡りをしていると、名木の分布は東に偏っていることに気づく。特に南九州には名の知られる桜は数えるほどしかない。その南九州一円の中で、この大坪の一本桜は代表的な一本桜と言えるだろう。開けた田園地帯の中で遠目にも目を引く巨樹で、樹形が美しい。周辺に遮るものがなく、日の出と共に朝日を浴びる。日照時間が長いからこそ、樹齢100年そこそこでここまでの巨樹へと育っているのかもしれない。
背後には国富町の名峰釈迦ヶ岳が見える。また、よく晴れた日には遠く霧島連山の高千穂峰を望むことができる。雄大な景色で心地よい。
写真にするにはちょっと周囲のロケーションが煩雑だが、桜そのものは大変素晴らしい。以前から見たいと思っていた一本だったが、このエリアは合わせて巡る桜が少なくなおかつ開花がものすごく早い。また、ヤマザクラだけに見ごろが3日ほどしかなく、遠征するにはハードルが高い。
今回は思い切ってこの桜に照準を合わせ、意を決して出かけて行った。結果にはとても満足できた。
Note | 田園地帯に立つヤマザクラの巨木。庚申塚の上に根を張る特徴的な形をしているが、由来は不明。宮崎でも早咲きの名木で、開花期には多くの花見客が訪れる。 |
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撮影 | 2021年3月13日、3月14日 |
名称 | 大坪の一本桜 |
別称 | なし |
樹種 | ヤマザクラ |
所在地 | 宮崎県東諸県郡国富町八代南俣2747 |
指定 | みやざき新巨樹100選 |
樹齢 | 100年〜150年 |
樹高 | 15.0m |
根回 | 不詳 |
幹周 | 4.0m |
枝張 | 不詳 |
出典 | 現地案内板 |