筆甫のウバヒガン桜

宮城県随一の名桜

宮城県の最南部、丸森町の筆甫地区にエドヒガンの古木が立っている。樹齢500年以上とも言われる古木ながら、支柱に頼ることなく自立しており、傍には薬師堂が立っている。周辺に民家や電線はあるがこの一角だけを切り取れば、さながら日本の原風景のような景観を呈している。

薬師堂は南北朝時代に勧進された薬師如来を祀っている。1335年、陸奥守北畠顕家公は築城中の霊山城の鬼門封じのため、この地にあった大蔵院を医王寺と改名して薬師如来を祀った。この桜もまた、その時に植えられたものと考えられている。南朝方に与した顕家公は後醍醐天皇の第七子、義良親王を伴って医王寺を参詣したと言われており、その伝承に因んで桜は親王桜と命名された。

世の名桜には、樹齢、風格、伝説の三つが備わっていることが多いと筆者は感じている。このうち二つしか備わっていない桜であっても、名桜と呼ぶにふさわしいものもある。このウバヒガン桜はその三つの条件をすべて兼ね備えた、まさに名木と呼ぶにふさわしい桜だろう。


Note 丸森町筆甫地区に立つエドヒガンの古木。義良親王がこの地の薬師如来を詣でたという伝承から、親王桜と命名された。
撮影 2021年4月3日
名称 筆甫のウバヒガン桜
別称 親王桜
樹種 エドヒガン
所在地 宮城県伊具郡丸森町筆甫和田27
指定 町指定天然記念物
樹齢 500年以上※
樹高 30m
根回 不詳
幹周 10m
枝張 不詳
出典 丸森町観光案内所「週末の丸森」
※案内板には樹齢659年とある。これは北畠顕家公が医王寺に薬師如来を勧請したとされる1335年から659年後の1994年に案内板が設置されたため。自治体が発信する最新の情報に準じ、ここでは500年以上とする。