祇園しだれ桜

清水へ祇園をよぎる桜月夜

学生時代を京都で過ごした筆者にとって、初めて一本桜を意識したのはここ円山公園の祇園しだれ桜だった。公園の真ん中に位置し、一際目立つ舞台の上で優美に枝を広げる姿はまさしく一本桜と呼ぶにふさわしく、初めて見た時のことをよく覚えている。滝桜も神代桜も知らなかった当時は、この桜こそが日本一の一本桜だろうとさえ思っていたが、のちにさまざまな名木の存在を知ることになり、やがて一本桜巡りにハマっていった。いわばこの桜は筆者にとって一本桜の世界への入り口となった桜だった。

現在の祇園しだれ桜は2代目に当たる。初代は樹齢200年を数える名木として広く知られていたが昭和に入って枯死した。その兄弟樹は同じ京都府の井手町や、遠く宮崎県五ヶ瀬町などで今も生きている。都からはるばる苗を持ち帰るほど、知られた名木だったということだろう。市中の桜の宿命か、2代目もまた、年々枯損が進んでいるように見える。

ちなみに円山公園は、京都市内ではよく知られた花見の名所である。特に夜桜が有名で、与謝野晶子のみだれ髪にも「清水へ 祇園をよぎる 桜月夜 今宵逢ふ人 みなうつくしき」と読まれている。情緒のある歌だと思う。と言っても、夜桜の時期は花より団子のサラリーマンや学生の花見客が多い。筆者もかつてはその一員だった。


Note 瑠璃寺の境内に立つシダレサクラの古木とその子孫樹。二本からなる景観が評価され、舞鶴市の天然記念物に指定されている。この地は細川幽斎が京都吉田山より桜を移植したとの伝承が残っている。
撮影 2007年4月5日
名称 祇園しだれ桜
別称 祇園夜桜
樹種 シダレザクラ
所在地 京都府京都市東山区円山町
指定 なし
樹齢 100年※
樹高 12.0m※
根回 不詳
幹周 2.8m※
枝張 10.0m※
出典 ※円山公園公式サイト
昭和3年(1928年)15代佐野藤右衛門氏が初代のサクラから種子を採取し、畑で育成したものとの記述による。