野付の千島桜

最大のチシマザクラ

別海町の野付小学校には樹齢100年を超えるチシマザクラがある。校舎の前に立ち、敷地に入るとまず最初に目につく巨大な樹冠。色濃い花をつけ、満開の姿は本当に見事である。6年間毎日この桜を見ながら育っていく子どもたちが、こんな桜は実は滅多にないのだと知るのはずっと大人になってからのことだろう。

チシマザクラは厳しい環境に適応するため根本から四方へと枝を広げ、扇形に育つ。本州では見ない種だが道東を車で走っていると民家の庭などに背の低いずんぐりとした桜をよく見かける。

低木が特徴とも言えるチシマザクラの中では、この野付の千島桜は群を抜いた大きさで、花の色も他のチシマザクラと比べれば濃く美しい。もう何年もずっと見たいと思っていたが、念願が叶いようやく訪れることができた。

日曜早朝の野付小学校はまだ肌寒いものの風はなく穏やかな天気。満開の桜の下に訪れる人はまばらだった。時折ウグイスが鳴き、クマバチが羽音を鳴らし、海鳥の声が旅情を掻き立てる。人も鳥も虫も、この地に息づく多様な生命が遅い春を謳歌していた。

2023年の春は休みと天気、見頃が合わず、思うように桜巡りができなかったが、シーズンの最後に最高の桜を贅沢に鑑賞でき、忘れられない年となった。

Note別海町立野付小学校の校舎の前に立つ国内最大のチシマザクラ。明治39年(1906年)に当時の3年生ら3名が野付半島から持ち運んだ3本の株の生き残りと伝えられる。
撮影2023年5月7日
名称野付の千島桜
別称なし
樹種チシマザクラ
所在地北海道野付郡別海町尾岱沼潮見町217-1
指定町指定天然記念物
樹齢約120年※1
樹高不詳
根回不詳
幹周不詳
枝張不詳
出典現地案内板
※1 明治39年に持ち込まれたという記録より