桃前のサクラ

切断にも屈せず

二本松の市街地の外れの農道に桜の巨木が立っている。道路はうまくその脇を通っているように見えるが、近づくと根や大枝の切断の跡が見られ、道を通すために傷つけられたのだと分かる。

二本松市の天然記念物であり、福島県の緑の文化財にも登録されているなど、行政により保護されるべき巨樹の一つだが、行政により傷つけられた樹でもある。根元には地蔵菩薩が祀られており、桜へのせめてもの詫びにも見える。心無い行政と批判の一つもしたくなるが、この道のおかげで助けられる人もいるのは確かだろう。何よりこの道がなくてはこうして容易く桜のもとにたどり着くこともできない。

傷つけられた桜は何も語らない。ただ愚直に季節の約束事を守り、花を咲かせていた。


Note二本松市桃前地区の農道脇に立つエドヒガンの古木。道路に面した根元と大枝は無惨にも伐採されているが、それでも力強く花を咲かせ、その生命力には感服させられる。
撮影2023年4月1日
名称桃前のサクラ
別称なし
樹種エドヒガン
所在地福島県二本松市戸沢字桃前20
指定市指定天然記念物
樹齢500年
樹高15m
根回11.3m
幹周6.2m
枝張東西:26.0m/南北18.2m
出典福島県観光情報サイト「ふくしまの旅」